上弦の月

タグ

「……と考えているのだがお前たちどう思う」
 アルビトロは目の前に座っている二人にそう問う。
「別にいいんじゃねえか」
「ってか、オレたちにかんけーねぇしぃ」
 処刑人二人組は興味がないので適当に相槌を打つ。
「ふ、そうか。では、この計画を実行に移そう。お前たち」
 アルビトロは背後に控えていた部下に呼びかける。
「さっそく手配をしてくれたまえ。華麗にして素晴らしいこの一大計画を」
「は、ただいま」
 部下は二つ返事でさっそく手配にとりかかる。
「ふっふっふ、これで私の野望が一つ近づいた」
 アルビトロはそう言うと机の上にある試作品を手に取る。
「素晴らしい出来だ。素晴らしい……」
 アルビトロはうっとりする。手の中には、タグ。それもトランプ柄ではない。……薔薇だ。
「やはりイグラも少々は麗しいものを盛り込まなくてはな」
「おい」
「………」
 アルビトロは凍りつく。背後から聞き慣れた声が聞こえたからだ。それもこれは。
「何をしている、お前」
「シ、」
「あ、しきてぃーじゃーん。何?遊んでくれるの?」
「黙れ。狂犬が」
 グンジに思いっきり冷たい視線を向け、シキはその視線をアルビトロのほうに動かす。
「……何だ。その怪しげな品は」
 シキはアルビトロの手の内にあるものをみて眉をしかめる。
「あ、これは」
「……まさか、タグを今の柄からそれに変えようなどとは思っていないだろうな」
 シキの口元が奇妙に歪む。
「そんな巫戯けた柄、この俺が許すとでも思っていたのか。おめでたいヤツだな」
(いぃやあぁああぁあああ!!!!)

 シキが来たお陰でアルビトロの計画は見る影もなく消え去った。
「私の野望が……麗しく素晴らしい計画が……」
「なあ、ジジィ。遊びにいこうぜー。ここ、ひまー」
「あー、そうだな。そろそろ行くか」
 失望中のアルビトロをスルーし、処刑人二人組はいそいそと獲物狩りに向かった。一人残されるアルビトロ。
(今度こそ、素晴らしいものを………)
 今度はシキの邪魔が入らないようなものを、と懲りずに計画するアルビトロであった。

(作成日:2009.02.12)

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