上弦の月

そうして、紡がれる日々

「は~な~し~ろ~」
「だから、悪かったって言ってるだろう」
「それが、本当に悪いと思っているヤツの態度か」
「あ~、もう、五月蠅いなあ」
「お前なあ。……っ、もういい。お前はもうこの仕事をするな。というか仕事の邪魔だ。
 ちょっと違う所に行ってろ」
「は~い」
 花白を部屋から追い出し一息つく。
「まったく、あいつは」
「最初から分かっていた事だろう。
 花白が書類整理できない事くらい。
 ほら、処理済の物だ」
「ああ」
 玄冬から書類を受け取る。
「それでも、ここまで出来ないとは思わなかった」
「そうか?」
「そうだ。
 仮にもあいつは元救世主でそれなりの勉学は受けさせてきたのだぞ。
 なのに、なのにあいつは!!」
「デスクワークには向かないだろう、あいつは」
「分かっている。分かっているが」
「ほら、書類」
「ああ、悪い」
 玄冬から書類を受け取る。
「ほら、茶だ」
「悪いな」
「いや」
 机に置かれた茶を啜る。
 …………上手いな………。
 書類整理も花白と違い、きちんと出来てるし、気も利くとは。
 うむ、あの性格さえなければ、部下に欲しいな。
「で、次は何をすればいい」
「ああ、じゃあ、そこの机の上にある書類を片してくれ」
「分かった」

「…………何だかなあ」
 部屋から追い出された花白は窓の外から部屋の中を見て呟く。
「何であんなに馴染んでるわけ。
 何かやだなあ。
 仕事一筋の夫とそれをささえる気の利いた奥さんみたいになってるじゃん」
 ………………。
「うわ、どうしよう。
 自分の想像が嵌りすぎて否定できないのが痛い。
 うーん、これはどうするべきか」
 いや、どうするもこうするもないんだけど。
「仕方ない。僕は探検でもしてこようかな」

「ん?何か言ったか」
「いや。幻聴か?」
「失礼な。まあ、いい。これも頼む」
「いいのか。まあ、いいが」

(作成日:2006.09.10)

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