第22回 深夜の王最小説60分一本勝負 お題「ロマン」「縛る」
ニーハイどうですか?
白い制服の上を赤い縄が縛りつける。
足も手も拘束されて、オレは身動きできずに床に転がされていた。
特殊な縛り方なのか少し動くと縄が肌に食い込む。
「最原ちゃん、お願いオレの話を聞いて!
お互いゆっくり分かちあおうじゃないか!」
「は?」
オレをこんな目にあわせている元凶に上目づかいで懇願してみたが、冷たい視線を返された。
そんな顔も素敵だけれど、今は悠長に眺めているときではない。
オレは最原ちゃんを説得するべく陳情を述べる。
「昨日は11月28日、つまり“いいニーハイの日”!
だから、オレは最原ちゃんのいいニーハイを拝める権利があると思うんだよね!」
「まず、その論拠が意味がわからないからね!」
「なんで!?」
オレは驚愕に目を見開いた。
こんな分かりやすい論拠、他にないと思うのに!
ほら、オレのそばに捨て置かれた黒いニーハイも最原ちゃんに履かれたがっているじゃないか。
「ニーハイから覗く太ももは至高だよ! 男のロマン!
上は少し大きめのリブニットで下はニーハイだけを履いた最原ちゃぐはっ」
「どうやらキミにはお仕置きが足りなかったみたいだ」
最原ちゃんのおみ足が綺麗にオレの体にヒットした。
怪我しないギリギリのラインの力加減から言って本格的には怒っていないみたいだが。
……ここら辺が潮時か。
(もう少し押せばいけるかなぁ、と思ったんだけれどなぁ)
黒いニーハイを履く最原ちゃんを見たいのは本音だ。
仕方ない、飛んでるときにこっそり履かせよう。
「まったくキミはいつもそういう事ばっかり言うよね」
「にしし、オレは最原ちゃんが大好きだからね!
どんな最原ちゃんも見たいんだよ」
「…………」
(お?)
最原ちゃんの頬に少し紅みが差したように見えた。
えっろ……じゃなくて、これはラブラブ一夜のエンドレスコースに突入できるのではないか?
「最原ちゃん、好きだよ、愛してる」
「王馬くん」
「だから、このニーハイがはっ!」
最原ちゃんの張り手がクリーンヒットした。
今のは完璧に選択肢を間違えた。
この勝手に回る口がニーハイの名前を出してしまったばっかりに!
「っ! 王馬くんなんて知らない! 少し頭を冷やせばいいんだ!」
顔を真っ赤にした最原ちゃんがオレを置いて走り去っていく。
ちょっと待ってほしい。今、オレがどういう状況であったかを。
「さ、最原ちゃん、待って! 縄、縄ほどいて!! ほどいてから行って!!!」
オレの叫びが空にこだました。
(作成日:2017.11.29)