第184回 王最版深夜の一本勝負
お題「ラブラブ度」
モノクマから見せられたモニターの中で、王馬くんを表すドットがピョコピョコ動く。
アイコンを乗せて動くゲージ、これがその人とのラブラブ度、をあらわすらしい。
(えっと、これは、王馬くんと仲が良い、ってことでいいのかな?)
強制的に参加させられている恋愛バラエティ番組『だんがん紅鮭団』。
ここに来てから、すでに5日が経っていた。確かに今まで、気がつけば王馬くんとばかり行動していたように思う。
(女性陣とは、あんまり交友が結べていない。……単純に、王馬くん以外のゲージが伸びていないだけだけど)
ただ、それが問題だった。この番組の卒業条件は、“恋愛的に結ばれた二人”だったはず。
どう見ても男の僕と男の王馬くんじゃ、恋愛的に結ばれないだろう。これでは、お互い卒業できない。そうと分かれば、
(明日は、王馬くん以外の人と過ごす!)
「う、ううっ」
寝苦しくて、目が覚めた。何だか違和感がある。
霞む視界を瞬かせて、視界をクリアにする。柔らかそうな癖毛が目に入った。
(……王馬くん?)
そうだ、王馬くんだ。王馬くんが何故か僕のベッドに入り込んでいる。
今日は一緒に過ごす予定じゃなかったはずだ。
「な、何が」
起き上がろうとして、シャツのボタンが全部外れていることに気づいた。何故だ?
「あれ、最原ちゃん、起きたの?」
「お、王馬くん」
「最原ちゃん、おはよう」
ちゅっ、と音を立てて頬にキスされた。
何だ? 何が起こってるんだ?
「王馬くん、どうして」
「えー、覚えてないのー? ラブラブ度がMAXって、恋愛で結ばれたと同じ意味なんだから、同じベッドで寝るのは当然じゃない」
「え?」
「もう卒業できるってこと! あとは番組盛り上げるために、ラブラブしてたらいいんだって話だったよね!」
そういうルール、あったっけ?
思案してみるが、まったく思い当たる節はなかった。
「で、でも、僕はキミのこと、そういう風には」
「本当に?」
「え?」
「最原ちゃん、オレのこともっと知りたいでしょ? ねー、それってどこまで知りたい?」
「どこまで、って」
「組織のこと? 闇のゲームのこと? それとも、どんな顔で恋人に語りかけるか、とか?」
王馬くんの手が首筋をなぞる。それだけで、背筋にゾワッとしたものが走った。
「お、王馬、くん」
「……にしし。というわけで、残りの日数もオレと遊んでね、最原ちゃん!」
「う、うん」
いつもと同じ口調なのに、いつもとは違う目で見つめられて、思わず頷いてしまった。
それが良かったのか悪かったのか、今の僕に、分からなかった。
(作成日:2020.08.09)