第13回 深夜の王最小説60分一本勝負 お題「パンツ」
PA・N・TSU
「ん……?」
最原は、ふと、違和感を感じて目を覚ます。
身を起こしてあたりを見渡してみるが、変わらぬ自分の自室だった。
ただ、足が布団に直で触れている感触がする。
(あれ? ズボン履いてたよな)
不思議に思い、上掛けをめくる。
想像通り、僕はズボンを履いておらず、かつ赤と黄色の縞のパンツを履いていた。
「…………王馬くん! 王馬くん、いるんでしょう!!」
僕はあたりをつけてベッドの下を覗き込む。
予想通り、超高校級の総統様である王馬くんを発見、丁重に首元のスカーフを掴んで引きずり出した。
「いやー、もう最原ちゃんったら下着姿でオレを出迎えてくれるなんてエッチだね! ぐえっ」
「……何かいった?」
僕は思いっきり総統様を踏みつけた。
これぐらいしてもバチはあたらないだろう。
「ひ、ひどいよ、最原ちゃん。 それが恋人に対する仕打ち?!」
「眠っている恋人のパンツを自分のパンツと履き替えさせるなんて変態にはこれぐらいしても問題ないと思うよ?」
「本当に目の保養だよね!
オレのパンツが最原ちゃんの大事なモノを包みこ…ぐはっ」
思いっきり体重を乗せて王馬くんの背中に座る。
大好きな僕の尻に敷かれるのだ、彼も本望だろう。
「で?」
「……で?」
「僕のパンツ……どこに持ってるの?」
寝る前には自分のパンツを履いていたことは疑いようがない事実だ。
そのパンツが入れ替えられた今、元のパンツは王馬くんが所持しているはずだ。
「にしし、どこだと思う?」
「…………」
僕は黙って王馬くんの上から退くと彼の服に手をかけた。
僕の予想が正しければ。
「なに? 最原ちゃんってば今日は積極的だね」
「っ!」
王馬くんのズボンにかけた手を押さえ込まれる。
流れを無視して客観的に見れば誘っている風に見えなくもないけれども……。
(王馬くんはこれが狙いだったのか……?)
手は王馬くんに握られたまま、彼のズボンから離される。
そのまま、僕は自分のベッドに座ってしまった。
「な……なに?」
「最原ちゃんのパンツ、そんなに見たいならすぐにじっくり見せてあげるよ」
王馬くんはいつもの微笑みを浮かべながら顔を近づけてくる。
そのまま、彼は僕の耳元でささやいた。
「最原ちゃん、パンツを交換しちゃいたいくらい愛してるよ!」
「……10点」
最悪な口説き文句を受けつつ、僕たちの身体はベッドに沈みこむ。
夜明け間近な時間だけれど、僕たちの時間は始まったばかりだ。
(作成日:2017.09.27)