上弦の月

第138回 王最版深夜の一本勝負
お題「SNS」

 スマートフォンが震える音がする。僕は布団から手だけを出して、鳴り続けるものを掴んだ。

「なに……」

 重たい瞼を押し上げ、スマートフォンを確認する。画面がメッセージ通知で埋まっていた。

『百田「おい、終一、これ、どういうことだ!」』
『春川「これ、殺していいよね」』
『赤松「ねぇ、最原くん。これ、本物? 王馬くんの嘘かな?」』

「何が起こってるんだ」

 まだ醒めきっていない頭を無理やり起こす。ロックを解除して、メッセージを確認すると、リンクが貼られていることに気がついた。

(原因はこれか?)

 リンクをタップする。飛んだ先は、希望ヶ峰の生徒がよく使うSNSだ。
 そのSNSの画面に、布団に入った王馬くんと、王馬くんの腕を枕にして眠っている僕の姿がうつっていた。

「は……?」

 投稿者は王馬くんだ。写真につけられているコメントは『昨夜はお楽しみでした♥』となっている。

「…………」

 王馬くんの連絡先を呼び出す。1コール、2コール、3コール。

『おっはよー、最原ちゃん。あなたの愛しの王馬』
「消せ」
『恋人に送る第一声としては0点だよ』
「ピッキングで勝手に部屋に侵入した上に、同意を得ずに写真を撮る恋人を持った記憶はないな。写真を消すなら、少しは考えてもいいけど?」
『……仕方ないなー。写真は消してあげるよ。いったん、通話切るね』

 王馬くんとの通話が切れて、一息つく。起きたばかりだというのに、どっと疲れた。

(布団にもぐりこむなら、僕が起きているときにすればいいのに)

 いつも自分が知らないときにやってくるから性質が悪い。

「……ん?」

 新たな通知が画面に現れた。どうやらSNSでメンションをつけられたらしい。

『DICEの総統「@探偵最原 二人だけの秘密を公開しちゃってゴメンね! 今度、二人っきりでエッチな閲覧会しようね♥」』
「おうまくんっ!!」

 王馬くんのさらなる爆弾発言でメッセージアプリの通知が大変なことになっていた。
 僕は、ふたたび抗議のために王馬くんに繋がる番号をタップした。



(作成日:2019.09.22)

< NOVELへ戻る

上弦の月